本記事では、3年生の後半の講義について振り返ってみます。
夏休み後~年度末までの講義
夏休みのあと、年度末までに実施された講義は以下の10科目です。
長くなってしまったのでその1では前半5つについて書きます。
これらもすべてブロック講義形式で行われました。
神経科学
4週間のブロックで、中身は神経内科、脳外科、精神科の3つです。
一番重かったのは神経内科です。検査がたくさんあり、なかなか大変でした。たとえば、「腕が動かない」という症状ひとつとっても、原因となっている部位は脳なのか?脊髄なのか?腕の神経なのか?実は神経ではなく筋肉の病気なのか?それとも神経筋接合部なのか?など色々考えられ、それを絞っていくために様々な検査があります。疾患も多かった…。本来であれば患者さんのところで直接所見をとらせていただく講義があったのですが、今年はコロナのせいでそれができず残念でした。
ALSをはじめ、神経難病は治療の難しいものも多いですが、核酸医薬や遺伝子治療の登場で少しずつ治るものが増えてきているのは希望でした。これからどんどん新薬が登場しそうで、研究も面白そうでした。最近の話題に興味のある方は「脊髄性筋萎縮症 治療」でググってみてください!
精神科はあまり深いところまでやらず、さわりという感じでした。そして学生の精神を蝕むことのない優しめの講義でした。笑
脳外科はあまりコマ数が多くなかったです。脳出血や動脈瘤と脳腫瘍がトピックでした。
体液制御・泌尿器
泌尿器科と腎臓内科です。内容は腎疾患、膀胱がん、体液制御(腎臓と体液制御には深い関係がある)と、男性生殖器の疾患でした。そういえば女性は婦人科があるけれど男性は泌尿器科にいくのか、と改めて認識しました。
腎臓の疾患がたくさん登場して覚えること多めだったのですが、病歴、組織生検の所見、検査所見から鑑別を挙げるグループワークは実践的で面白かったです。
一番印象に残っているのは試験問題です。
「新型ウイルス感染症の影響で、泌尿器科では手術件数を制限しなければならない。今は1例しか手術できず、次に手術できるのは3ヶ月後である。次の症例のうち優先すべきものはどれか、1つ選び理由とともに回答せよ。」
さまざまな年齢、性別、疾患、進行度の症例が5つ提示されていました。コロナ禍における現場の状況を反映した問題で、とても印象的でした。
一般外科
1週間だけのブロックでした。〇〇外科の寄せ集めなので、他のブロックのくりかえしの部分も多かったです。
このブロックで印象に残っているのは、小児外科です。1コマだけだったのですが、私が小児科に興味ありなのでどうしても印象にのこりがちで…。
頻度が高いからか、ほぼヘルニアの話でした。そんな中、腹壁破裂(腸管が体内に収まっておらずおへそから出ている)に対して、「サイロ形成」という方法で治す治療が、疾患のインパクトとは裏腹に大変キレイに治るので感動しました。お腹を縫って戻すと傷跡が大きいのですが、この方法ではちょっと出べそになるくらいでほとんど傷が残らないんです。もちろん赤ちゃんの負担もずっと小さいでしょう。外科の進歩ってすごいです。誰がどうやって新しい方法を思いつくんでしょう…。
小児外科では、手術と言われたときのショックや、入院の付き添い、術後のケアなど、つい親目線でも色々想像してしまいました。
感染
これも1週間だけのブロックです。2年生の感染基礎の方が覚えることが多かった印象です。
COVID-19の話題ももちろん出てきました。特に印象に残っているのは、これまた小児科の話なのですが、毎年季節性に流行る感染症が今年はのきなみ大幅減少しているという事実です。先生が「ワクチンも大事だけどやっぱり感染対策の行動がどれだけ効果的かわかる」とおっしゃっていました。ちなみに突発性発疹はほとんど減っていません。これは、ほとんどの大人が原因ウイルスを保有しており、家庭内感染が主な経路だからです。なるほどなるほど。
もうひとつは耐性菌の話です。なんの菌が原因かわからないけれど細菌感染症が疑われる場合は、いろいろな細菌に効果のある抗菌薬を使います。しかしやたらと広くカバーする薬ばかり使うと耐性菌が増えてしまって、もう効く薬がない、という困ったことになってしまいます。「患者は救う」「耐性菌も防ぐ」、「両方」やらなくっちゃあならないってのが「抗菌薬治療」のつらいところ…。どの抗菌薬を使うかの判断には経験も必要で、奥が深いなと思いました。
血液・腫瘍
赤血球疾患(貧血とか)、白血球疾患(白血病とか)、血小板疾患(血友病とか)、リンパ系疾患(リンパ腫とか)と、放射線治療、造血幹細胞移植、緩和ケアなどを学びました。疾患が多くて大変だった印象なのですが、今こうやって並べてみるとそうでもないような…。
白血病は「血液のがん」と言ったりして、昔は死に至る病でしたが、今では分子標的薬が開発されて、かなり治る病気であるということがよくわかりました。CAR-T療法(これもホットトピックなので気になる方はググってください)はもっと派手に効くイメージだったのですが、現場の先生の印象ではまだそこまでの推し治療ではないようです。
つぶやき
夏休みを過ぎると先生方もZOOM講義に慣れてきて、ZOOMの機能を使ったアンケートや、ブレイクアウトルームでのディスカッションなども時々活用されていました。
今年は試験もほとんどがオンラインで行われたので夏休み以降ほとんど大学に行っていません。
「その2」では講義の思い出とともに、ブロック授業でよく行われたProblem Based Learning(PBL) とTeam Based Learning(TBL)も紹介したいと思います。