ひとつ前の記事に続いて、専門科目"じゃないほう"の講義の概要をご紹介します。
前の記事では
について書きました。本記事では残りの
- 生命倫理
- 主題別科目
についてご紹介します。
生命倫理
2~4年生まで必修の授業です。
生命倫理の講義数は多くありません。過去の時間割を見てみたら、2年生で2コマ、3年生で15コマ、4年生で7コマでした。
大きく分けて、総論、医の倫理、研究倫理、の3部構成です。
総論
2年生の2コマが総論にあたります。なぜ生命倫理を学ぶのか?倫理問題をどのように考えたらいいのか?という導入としての講義でした。
「ゆでガエル」のお話から始まり、ある研究データ捏造事件における当事者の発言が紹介された導入が印象的でした。
ニュルンベルク要綱、ヘルシンキ宣言、タスキギー事件など、医療倫理に関する歴史についても紹介され、医療倫理4原則についても学びました。
医の倫理
トピックは多岐にわたりますが、例えば、以下のような話題がありました。
研究倫理
研究倫理については
- 研究不正
- 臨床治験
- ゲノム研究
- 再生医療
における倫理的問題について、学びました。
主題別教育
「主題別」は医科歯科でこれまで受けた講義のなかでいちばん独特でした。
配布された資料によれば、主題別教育とは、
「人間」という存在について、人間を生物的社会的存在たらしめている要素である「文化」「生命」「言語」「制度」「時間」という5つの視点から考えてみようという取り組み
です。
具体的には、文化人類学、歴史学、社会学、法学、政治学、哲学、倫理学などの人文科学系科目を学びます。
仕組みがやや複雑なので、まずはそこから書こうと思います。
仕組み
- 1年次:人文科学系の講義を選択履修する
- 2年生進級時:主題を選ぶ
- 2年次~3年次前半:主題と紐づいた講義を履修する
- 3年次後半:共通講義/主題に基いたテーマで論文を書く
編入生は入学前に大学からメールが来て、主題を選ぶところからスタートします。いずれの主題も30名程度の定員が設けられているので、場合によっては第一希望にならないこともあるようです。
ゴールは、3年次に自分で問いを設定し、調査・考察して結論をまとめることです。最終成果物は体裁を整えた論文形式で提出します。
選んだ主題ごとに、2年次に選べる講義が変わります。例えば、「戦争と科学」を履修したい場合は、主題として「文化と人間」か「制度と人間」を選んでいる必要があります。
私は、「制度と人間」という主題を選択しました。
2年次~3年次前半
2年生で2つ、3年生で2つ、合計4つの講義を選択して履修します。上で書いた通り、自分の選んだ主題に紐づいた講義の中から選ぶことになります。こちらも人数制限があるので、希望通りになるとは限りません。
講義はたくさんあり、ジャンルの幅も広いです。例えば、
- スポーツと心
- フランス文学を読む
- 物理数学演習
- ドイツとヨーロッパの社会
- 危険物の科学
- 宇宙と生命
- 医療の社会学
- 植物の科学
- 民主主義を再考する
といったように、大変バラエティに富んでいました。私が履修したのは、「医療の社会学」、「情報社会と人間」、「ヒトの脳と言語」、「生命科学と医学」の4つでした。
3年次後半
3年生の後半での内容は大きく分けて
- 「医療と法」「医療と社会」という2つの共通講義
- 「セミナー論文」
の2つのパートに分かれていました。
医療と法
社会保障、公的扶助、年金、子育て支援などについて学びました。
制度そのもの、具体的な条件や金額、関連する政策、課題と本格的な内容で、かなりボリュームがありました。
医療と社会
ひとことでくくるのが難しいですが、社会学と医療の接点あたりの様々なトピックを学びました。
具体的には、医療システムの国際比較、人工内耳とその課題、出生前診断、地域包括ケアシステムなどが話題として取り上げられました。
セミナー論文
自分の主題に沿ったテーマで、自由に問いを設定し、それについて調べ、まとめ、考察して論文形式にまとめるものです。
講義の初めの方はテーマ設定と、全体の大まかな構成について発表し、先生や同じグループの同級生からフィードバックをもらってブラッシュアップしていきます。後半では進捗状況を報告しながら、困っている点を相談し、完成に向けてひたすら書き進めていきます。
かなり自由度が高く、同じ主題の中でもものすごく幅の広いテーマが提案されていました。
人文社会系論文の書き方や、注の付け方、引用の仕方、参考文献の体裁など、お作法の部分についてもレクチャーがありました。
つぶやき
学生に軽く見られがちな生命倫理と主題別科目なのですが、個人的にはとても学びが多かったです。
生命倫理はCBTや国試でも登場する内容なので、その意味でも重要です。しかしそれ以上に、いち医療人として、知っておくべき内容が多かったように思います。とくに、matureな編入生のみなさんには響くところが多いのではと思います。講義としては厳しくはないので出席さえすればよいのですが、医学教育の文脈では重要だと感じました。
取り上げられているトピックは編入試験の題材にもなりそうな気がするので、ここに書いたものであまりピンとこないものについては一度簡単に調べてみるのもオススメです!
主題別は仕組みを理解するのに少し時間がかかりましたが、講義自体はとても面白かったです。私が選択した中では「医療の社会学」が重い内容で、真面目に取り組んでいた私は毎回講義後にぐったりしていました(いい意味で)。「医療と社会」も知らなかったトピックや視点があり、興味深かったです。
「医療と法」は、社会人経験者や行政まわりに興味のある方にとって、知っていたようできちんと知らなかったことを改めて学べる、ためになる講義だと思います。一般の学生にとっては、あまり入ってこない内容かもしれません…笑。
セミナー論文は作文のニガテな私にはなかなか大変で、テーマは設定したものの調べていく中で最初にたてた仮説を自分で否定したくなってきて、かなり苦労しました。同じグループの中にすごく面白い論文を書いている学生もいて、ただただすごいなあと感心しきりでした。
面白かったので、つぶやきが長くなってしまいました。医師は理系のイメージがありますが、人文社会系科目、重要だと思っています。