東京医科歯科大学(東京科学大学(仮))医学部編入とTOEFL受験

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【医学部編入】第1次選抜(筆記)試験問題の出典と雑感(東京医科歯科大2022年度~2019年度+それ以前)

リクエストをいただいたので、過去の筆記試験問題に取り組んでみようと思ったのですが、今年の筆記試験までもうあまり時間がないです。

そこで、この記事で

  • 過去の問題の出典リスト
  • 問題をざっと眺めた雑感
  • 私ならどのような対策をするか

をまとめようと思います。

 

少しでも早く情報をお届けするために、まずは出典リストをそろえて公開しました。

[20220526] 雑感と対策(私見)について追記しましたが、そのうち別記事に移動するかもしれません。今年の筆記試験が終わるころまではしばらくこのままにしておきます。

 

過去問の出典一覧

実際の問題ではこれらが一部抜粋されたり省略されたりしています。

リンク先はフリーアクセスでない場合もあるようですがご了承ください。

2022年度

問題1

Fukushima K, Satoh T, Sugihara F, et al. Dysregulated Expression of the Nuclear Exosome Targeting Complex Component Rbm7 in Nonhematopoietic Cells Licenses the Development of Fibrosis. Immunity. 2020;52(3):542-556.e13.

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1074761320300789

問題2

Bothwell LE, Greene JA, Podolsky SH, Jones DS. Assessing the Gold Standard--Lessons from the History of RCTs. N Engl J Med. 2016;374(22):2175-2181.

https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMms1604593

2021年度

問題1

Philibert A, Fillion M, Mergler D. Mercury exposure and premature mortality in the Grassy Narrows First Nation community: a retrospective longitudinal study  Lancet Planet Health. 2020;4(4):e141-e148.

https://www.thelancet.com/journals/lanplh/article/PIIS2542-5196(20)30057-7/fulltext

問題2

Prata JC, da Costa JP, Lopes I, Duarte AC, Rocha-Santos T. Environmental exposure to microplastics: An overview on possible human health effects. Sci Total Environ. 2020;702:134455.

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0048969719344468?via%3Dihub

2020年度

問題1

Edwards SR and Johnson TL. Intron RNA sequences promote cell survival. Nature. 2019 Jan; 565:578-579

https://www.nature.com/articles/d41586-019-00088-y

Molecular Biology of The Cell (6th Edition), p.319

問題2

乳がん検診ガイドライン2018の抜粋(日本語)

参考文献の要約(5つ):略

2019年度

問題1

Robert P Gale, et al, Are We Prepared for Nuclear Terrorism? N Engl J Med 2018; 378:1246-1254

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMsr1714289

問題2

本文:Ponomarenko A, Korotkova T. Hunger is a gatekeeper of pain in the brain, Nature. 2018 Apr; 556(7702):445-446

https://www.nature.com/articles/d41586-018-04759-0

設問の図:Alhadeff et al., 2018, A Neural Circuit for the Suppression of Pain by a Competing Need State, Cell 173, 140-152

https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(18)30234-4

 

2018年度以前

2018年度以前の筆記試験科目は、自然科学総合の他に数学、物理、化学、生物がありました。

試験方式が全く違うので参考になるかわかりませんが、手元にある範囲で「自然科学総合」の出典を示しておきます。ちなみに解答時間は問題1問題2合わせて60分でした。

2018年度

問題1

Jones DS. CABG at 50 (or 107?) - The Complex Course of Therapeutic Innovation. N Engl J Med. 2017;376(19):1809-1811.

https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMp1702718

問題2

Ledford H. Dog DNA probed for clues to human psychiatric ills. Nature. 2016;529(7587):446-447.

https://www.nature.com/articles/529446a

2017年度

問題1

Normile D. Slow burn. Science. 2016;351(6277):1018-1020.

https://www.science.org/doi/10.1126/science.351.6277.1018

問題2

Peter Parry. The difficulties doctors face in diagnosing autism. The Conversation, 2016

https://theconversation.com/the-difficulties-doctors-face-in-diagnosing-autism-53731

2016年度

問題1

Splice of life. Nature. 2015;521(7550):5.

https://www.nature.com/articles/521005a

問題2

Thomas McCormick. When doctors help a patient die. the New York TImes. 2015

https://opinionator.blogs.nytimes.com/2015/05/13/the-ethics-for-doctors-in-helping-a-patient-die/

2015年度

問題1

Franklin D. A dangerous game. Sci Am. 2013;308(2):27-28.

https://www.scientificamerican.com/article/a-dangerous-game-athletes-risk-untested-stem-cell-treatments/

問題2

Alan Schwarz. Thousands of toddlers are medicated for ADHD, report finds, raising worries. the New York Times. 2014

https://www.nytimes.com/2014/05/17/us/among-experts-scrutiny-of-attention-disorder-diagnoses-in-2-and-3-year-olds.html

2014年度

問題1

Butler D, Cyranoski D. Flu papers spark row over credit for data. Nature. 2013;497(7447):14-15. 

https://www.nature.com/articles/497014a

問題2

Moheb Costandi. If neuroimaging can reliably discern truth from falsehood, should brain scans be admissible evidence in court cases? seedmagazine.com 2013 

[url 未発見]

 

 

雑感

2019以降の問題を眺めた感想です。出典は新しい順に書きましたがこっちは古い順に書きます。書いてはみましたがただのつぶやきなのであまり役には立たない気がしています…。

2019

社会的な問題と、最新の研究というセットです。

問題1は放射性物質によるテロの話です。英語自体は読みにくくはないのですが、やや長めです。表の解釈、半減期の計算、記述、と問題は多彩です。問題1に時間をかけすぎない、というのがカギだったと思います。

問題2はマウスを使った、空腹と痛みに関する神経学的制御メカニズムの研究です。2018年度以前はこのような the science な内容は出題されていなかったので、論文を読み慣れていない人は面食らったかもしれません。しかし本文は論文を解説するニュース記事からの引用で比較的読みやすいです。落ち着いて解けばそれなりに回答可能だと思いますが、研究のロジックや実験内容を正しく理解する必要があります。「論文だからってビビらない」のが大事だったと思います。

 

2020

問題1は英文のボリュームは多くはありませんが、問が(7)まであって結構時間がかかりそうです。英語で回答する問題や100字~150字の記述があります。イントロンの話題で、生物系のバックグラウンドの人は有利なように思います。

問題2。ガイドラインからの出題もあるんですね。内容は他の年に比べればわかりやすいように思いますが、いかんせん授業で習ってしまっているので受験当時の気持ちでジャッジするのが難しいです。文献はたくさん登場しますがどれも要約なので、回答に必要なところを探す手間が省けそうです。その分他の人と差がつきにくいかもしれません。

 

2021

2019とは異なり、the science な内容は出題されませんでした。研究論文の方が得意な人にとってはツラいセットかもしれません。問題文自体のボリュームは少なめです。日本語の表などもありました。

問題1はカナダの先住民の水銀曝露がテーマで、まあそれなりに馴染みのある内容です。問題は5問です。(3)でmatched-pair approachの利点を聞かれていますが、知識がなくても本文から読み取れます。150字、200字の記述がややまとめにくく、ここで差がついたのではと推察します。

問題2はマイクロプラスチックというテーマ自体はよく聞くものですが、免疫機構との関係などあまり馴染みのなさそうな内容も登場します。問題自体は5問ですが、なかなかきれいにまとめにくく、英語力以外の部分でもしっかり差が付きそうな印象です。

 

2022

2019と同じく、社会的な問題と、最新の研究というセットです。

問題1が曲者です。2019がニュース記事ベースだったのに対して、2022は論文そのものが問題文となっています。figureも多数掲載されているので、ぱっと見の圧がものすごいです。テーマも耳慣れない「線維症」で、解く前から心折られた方もいるかもしれません。問題は4問と少なく、問われていること自体はシンプルではあります。もちろん全文読む必要はなく、RNA-FISHやフローサイトメトリーなどの実験手法を知っている必要もありません。ただし、「WT」「Rbm7-/-」などマウスの遺伝子操作に関わる記述や、「ノンコーディングRNA」が論文中で「ncRNA」と表記されることは理解できる必要があります。論文の中からキーワードや結論部分を拾うことに慣れているか=論文を「ナナメ読み」したことがあるかどうかで差がついたのではないでしょうか。生物学系の論文に慣れていない人にはかなり手ごわい内容だったと思います。

ちなみにこの論文のsecond author の佐藤先生は数年前から医科歯科に来た、若手でバリバリ活躍されている先生です。もしかしたらそういうご縁で出題されたのかも?当時は阪大のご所属で、この論文は阪大からプレスリリースもされています。

https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2020/20200318_2

 

問題2はRCTについてのレビューですね。一応冒頭にRCTとは何ぞやについての日本語の解説が引用してありますので、事前知識なしでも解けるようにはなっています。医学用語がちらほら登場しますが、話の大筋をはずさなければそれなりに記述はできそうです。ただし記述量が多いので、高得点をとるとなると読解力と論述力が試されそうです。

 

すぐできる対策

ざーっとレビューしてパッと思いついたことを書いています。「私ならこれをするかな~」というレベルの対策ですのでその点ご了承ください。

英文(社会的課題)を読み慣れる

筆記試験を受けているみなさんはTOEFLスコア80以上なわけですから、英語力そのもので大きな差が付くことはないでしょう。しかし出題されがちなジャンルの英文に慣れておくというのはスピードアップと読解力アップのために必要かと思います。

私なら、練習問題として、New England Journal of Medicineの”Medicine and Society”か"Perspective"の記事をまずチョイスします。

https://www.nejm.org/medical-articles/medicine-and-society

https://www.nejm.org/medical-articles/perspective?date=past5Years

理由は

  • NEJMからの出題がちらほら見られる
  • 毎年「医療と社会」的なテーマの出題がある
  • NEJMは有名Journalなので質は担保されている

からです。同じ理由で、Nature "News & Commet "も良さそうだなと思います。

Nature News & Comment

 

問題は、もしかしたらオープンアクセスの記事が少ないかもしれないことです。私は今、医科歯科(journalと契約している)のネットワーク経由で全文読めているのですが、環境によっては要約しか読めないかもしれません…。

 

英文(研究論文)を読み慣れる

2022問題1みたいなthe 論文がもし今後も出題されるなら、原著論文に慣れるしかなさそうです。「ナナメ読み」するためには

  • 結論(言いたいこと)を先に把握する
  • 実験手法で知らないものがあっても気にしない
  • その実験で何を明らかにしたのかは把握する

ことが大事で、各段落の最後の"Therefore..."などまとめkey wordの後を拾って読む練習も必要です。

Nature "News & Views" などの論文解説記事を読んでおくのもいいと思います。2019の問題文は解説記事でしたので、今後もこういう出題はあるかなと思います。

News & Views | Nature

 

どの論文を読むべきかわからない、生物学のバックグラウンドが皆無でツライと言う方は、各大学からのプレスリリースから入るのはどうでしょうか?例えば、2022の論文も、プレスリリースを読んでから原著論文を読めば相当わかりやすいはずです。プレスリリースは日本語ですし、専門用語には解説がついていて勉強にもなります。

https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2020/20200318_2

 

最低限必要な知識を確認する

ざーっと問題を見ている限り、知識前提の出題はほとんどないように思います。たとえばRCTについて全く知らなくても、その場で説明を理解できれば良いようになっています。

とは言え、知っていればこの部分の説明は読み飛ばせる上に、本文も頭に入ってきやすいので、知っているに越したことはないです。過去問を見ていて、知っているとお得かもしれないと思ったことを羅列します。

疫学分野

RCT(ランダム化比較試験)、無作為割り付け、二重盲検法、症例対称研究と結果の表の見方、コホート研究、選択バイアス、情報バイアス、交絡因子、システマティックレビュー、p値、検定、統計的有意、感度と特異度

このあたりの分野はたぶんweb上に有用なまとめがごろごろあるでしょう。

生物学・医学分野

高校レベルの生物学の知識はないとつらくなってくるので、あやしいところがあれば復習するのがオススメです。高校範囲外では、RNAシリーズのncRNA、miRNA、siRNAは登場する可能性があると思います。

あとは挙げだすときりがないので、論文に触れながら、よく見るものについて都度調べる、というスタンスが正解ではないでしょうか。

実験手法について調べる時には

  • 何をしている道具なのか
  • どういうときに使うのか

の2点を整理していくと良いと思います。原理を理解する必要はありません。

例えば2022問題1のFigure2 Fなどに登場しているフローサイトメトリーは、「なにがしかのマーカー(正確には表面抗原)のあり/なしで細胞を分類する」道具で、「そこに存在する細胞種の分布を示したいとき」「実験操作によってある種類の細胞(だけ)が増えた/減ったことを示したいとき」に使います。

論述力を鍛える

150字、200字の記述がいくつかあるので、短時間に日本語で回答をまとめる力がかなり重要だと思っています。しかしこれに対しては「すぐできる対策」があまり思いつきません。過去問を使って繰り返し練習するくらいでしょうか…

メンタルを鍛える

試験制度が変わってまだ数年しかたっていないので、びっくりするような出題もあると思います。しかし一貫して、知識を要求するような問題はほぼ出ていないので、落ち着いて本文を読めばきっと答えがあるはずです。

TOEFLスコア80を超えていれば、英語力のみによる差はあまりないはず。自分が「えっ…」と思った問題はみんなも「えっ…」と思っています。焦って実力が出し切れないのはもったないなさすぎるので、自分は上位に入っているという自己暗示をかけていきましょう!

 

つぶやき

かなり急いで書いたため、読みにくく長いものになってしまいました…。あとで編集する可能性が大ですが、とりあえず公開します。

どこか1行でもお役に立てば嬉しいです。ここまで読んでいただきありがとうございます。