東京医科歯科大学(東京科学大学(仮))医学部編入とTOEFL受験

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【医学部編入】第1次選抜(筆記)試験問題の回答案 問題1(1)(東京医科歯科大2019年度) 

リクエストいただいたので、頑張ってみようと思います。今回は、2019年度の問題1設問(1)です。

ただ、あくまでTOEFLイマイチなただの学生の回答ということをご了承ください。キレイな解答が欲しい場合はKALS生などと友達になるのが手っ取り早いと思います…。

間違いについてはぜひご指摘ください!適宜修正します。

 

出典は以下の記事でした。

Are We Prepared for Nuclear Terrorism? (Robert P Gale, et al)

The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE, March 29, 2018

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMsr1714289?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori%3Arid%3Acrossref.org&rfr_dat=cr_pub++0pubmed 

★210606追記

 ただし、上記記事のうち、問題文に記載されているのは「Radiation dose」の段落までで、それ以降はカットされていました。この差は(5)を解く上で非常に重要です。間違いがあり大変失礼しました。コメントでのご指摘、ありがとうございました。

 

問題1 (1)下線アのヨウ素剤が放射性ヨウ素の体内への取り込みを予防する機序とその目的を下のチェルノブイリ事故の調査結果を参考に200字以内で説明せよ

※下線ア

Neuclear Power Facilities のセクションのParagraph 1「distribution of iodine tablets to block uptake of radioactive iodine」の部分

チェルノブイリ事故の調査結果

(表)

f:id:hana_megane:20200511011050j:plain

2019筆記問題1(1)表

(文)

Estimated risk of developing thyroid cancer after a radiation dose of 1 Gy, by level of soil iodine in the settlement of residence at the time of the accident and by potassium iodide (i.e., antistrumin) consumption status (analyses restricted to subjects with radiation doses to the thyroid of less than 2 Gy)*.

* Levels of iodine in soil in settlement of residence at time of accident were dieided into tertiles, and soil iodine concentration was used as a surrogate marker for iodine status of study subjects.

OR = odds ratio at 1 Gy compared with no exposure; CI = confidence interval.

注) tertiles : 三等分

(Cardis E, et al., Risk of thyroid cancer after ecposure to I-131 in Childhood. J Natl Cancer Inst 2005より抜粋)

 

エッセンス

  • 問われているのはヨウ素剤が放射性ヨウ素の取り込みを阻害することの機序と(ヨウ素剤投与の)目的
  • 参照すべきは本文ではなく、表
  • 表の値は放射線非曝露群に対する1Gyの放射線曝露群における甲状腺がん発症リスクのオッズ比
  • 比較①:ヨウ化カリウムの摂取 なし/あり
  • 比較②:事故当時居住していた場所の土壌中ヨウ素 高濃度/低濃度

 

回答を作るまでの頭の中

まず、下線アは、問題文に書いてあるまま「放射性ヨウ素の取り込みを阻害するためのヨウ素剤配布」です。問われているのはその機序と目的の説明で、表1を参考にと言われていますから、この問に関しては本文中に答えはないことをすぐ理解する必要があります。表だけを見るのが正解です。焦って本文を読むと迷子になります。

表を見ます。一番左の列はシンプルに「ヨウ化カリウムの摂取 なし/あり」です。

では4つの数字は何を示しているのか?注釈文も参考にしつつ解読すると、右列の一番上にある「OR at 1 Gy」は「1Gyの放射線を浴びた時と放射線曝露なしを比較した時の甲状腺がん発症リスクのオッズ比」であることがわかります。まあ数字が大きければ甲状腺がんになりやすいんだろう、ということが想像できれば、回答を作る上ではほぼOKでしょう。

「soil ioidine」による分類は、説明文によれば、事故当時の居住地の土壌中ヨウ素濃度が高いか低いかで群を分けています。なんで土壌中のヨウ素が出てくるのか、一瞬戸惑うかもしれません。

さて、表に登場する条件たちがわかってきたので、次は数字を見ます。言えることは

ということです。

3つ目の解釈がやや難しいです。なぜ土壌中にヨウ素が豊富だとリスクが減るのか?ヨウ素剤と同じ機序と言えるか?と考えを詰められたかどうかで差がついたかもしれません。

 

回答案

回答案1

 表より、放射線曝露によって甲状腺がん発症リスクが上昇するが、ヨウ素摂取によってこれを抑えられることがわかる。また、土壌中にヨウ素が豊富な地域ではヨウ素が乏しい地域と比べて甲状腺がんのリスクが小さい。ここから、体内に十分量のヨウ素があることで放射性ヨウ素の取り込みが阻害されることが示唆される。ヨウ素剤はこの機序を用いて、高線量地域における甲状腺がん予防の目的で使用されると考えられる。

(192字)

事前知識があまりなくても書ける回答です。表をちゃんと読み取ったことが伝わるように意識しました。

 

回答案2

 甲状腺ホルモンはヨウ素から合成されるため、放射性ヨウ素甲状腺に集まりやすく、被ばくによって甲状腺がんの発症リスクを高める。表より、ヨウ化カリウムの摂取や土壌にヨウ素が豊富なことによって体内にヨウ素が十分存在すると、放射性ヨウ素の取り込みが阻害され、甲状腺がんのリスクが低下すると考えられる。この機構を利用し、放射線量の高い地域において甲状腺がんを予防する目的でヨウ素剤が投与されると考えられる。

(198字)

 こちらは逆に、事前知識をふんだんに使った回答です。もう少し表の内容に触れたかったですが、200字だとこのへんが限界です。

 

つぶやき

東日本大震災福島原発事故のときにヨウ素剤が配られました。その後も甲状腺がんの発症ついての追跡調査がなされています。このあたりの知識がある場合は「なんとなく」で書いても大外れはしない問題だと思います。土壌の話が出てきましたが、日本人はもともと海藻をよくたべてヨウ素摂取が過剰なくらいなので、放射性ヨウ素には比較的強いようです。福島原発の事故後の甲状腺がんリスクもあまり(ほとんど?)上がっていないようです。詳細が気になる方はぜひ調べてみてください。

「Gy」が放射線量に関する単位(グレイ)であること、放射性ヨウ素甲状腺がんに関連があること、オッズ比、などについての多少の知識があると有利です。事前知識がなくても常識と論理である程度推測できるようにトレーニングしておくことも大切。

オッズ比の信頼区間の解釈に自信がない場合は「有意」と言う言葉は避けるべきです。オッズ比はリスクの比をとっているので、差が全くなければ「1」になります。よって95%信頼区間が1をまたいでいる場合は「差がない」、1を含まない場合は「差がある」と言えます。2019年度試験の中でここが一番統計学っぽかったです。

あらためて回答作ってみて思ったのは、200字に収めるのは大変だということです。もっと絞った回答にしてもいいのかもしれません。実際の試験で私が書いた解答はどちらかといえば回答2に近かったような気がします。

 

また時間ができたときに少しずつ回答案を作ってみます。