東京医科歯科大学(東京科学大学(仮))医学部編入とTOEFL受験

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【医学部編入】第1次選抜(筆記)試験問題の回答案 問題1(2)~(5)(東京医科歯科大2019年度) ★210606追記

前記事の続きで、2019年度入試の問題1(2)からです。

 

(2) 下線イは、病院跡に放置されていた放射線源のセシウム(Cs)-137が盗難され、それに接触した住人等が被爆し、数名が放射線障害で死亡するに至ったゴイアニアで起きた放射線被爆事故です。

※下線イ

Neuclear Power Facilities のセクションの最後の部分「the event in Goianina, Brazil」

 

セシウム(Cs)-137の放射性崩壊図を下記に示す。(A)に該当する元素を下から選べ。

a. Ba(バリウム

b. La(ランタン)

c. Ra(ラジウム

d. Rb(ルビジウム

e. Sr(ストロンチウム

f:id:hana_megane:20200511011137j:plain

2019筆記問題1(2)図
回答

a . Ba(バリウム

 

つぶやき

Csの次は何か、あるいは原子番号56は何かを知っていれば終了、知らなければカンで答えるしかない、と言う問題です。ここにある情報から考えてわかる問題ではないです。

ガンマ線は脳腫瘍などの治療に用いられるのですが、医療用ガンマ線を作り出すためによく利用されているのがセシウム137を用いたこの反応です。だから、知っておいてね、ということなのでしょうか…。厳しいなあ、私は知りませんでした。

 

 

②本事故で盗まれたセシウム(Cs)-137は15年前に病院に設置された際には74TBqの放射能を有していた。盗まれたときの放射能を計算で求めよ。

セシウム(Cs)-137の半減期は30年とし、計算式も記載すること。必要であれば√2=1.4、log2=0.69を用いてよいが、答えは小数点以下を四捨五入し整数とすること。

 

回答

求める放射能

= 74×(1/2)^(15/30)

= 74×(1/√2)

= 52.9 ~ 53TBq

つぶやき

こちらは逆に高校物理で解ける問題です。同じ問題はなかなか出ないでしょうが、半減期の計算は大学の化学でも使いますし、復習しておくのがオススメです。

 

(3)  テロリストが下線ウ「dirty bomb」を使用する目的を100字以内で説明せよ。

※下線ウ:Radiologic Dispersion Devices のセクションの最後、第1 paragraphでTNTがでてきたすぐあとの「dirty bomb」

回答を作るまでの頭の中 

下線ウのあたりを見ると、「— a so-called dirty bomb」とあるので、この前の部分でdirty bombとは何かが説明されていることがわかります。下線ウと同じセクションでとりあえず回答に使えそうなところを探すと、

Terrorists’ goals for deploying such devices are …

という記載があるので、これ以降をまとめればよさそうです。内容が足りなければ他のセクションをつまみ食いする可能性もありますが、とりあえずこのセクションで使えそうなことを抜き出してみると

  • dirty bombとは、放射性物質をばらまく装置や爆弾のこと
  • 政治的、心理的影響を与えるのが目的
  • 放射線による健康被害はあまり問題にならない(ので目的ではない)
  • 広範囲に混乱やヒステリーを引き起こす
  • 政府の不適切な行動を誘導する
  • 9.11でのアメリカがその例

制限字数が100字なのでこれで十分そうです。

回答案1

テロリストが爆弾やその他の機構で放射性物質を散布する目的は、「放射性物質が用いられた」という事実により社会を混乱させ、政府の不適切な行動を誘導し、状況をさらに複雑化、悪化させることである。

(94字)

回答案2

テロの手段として放射性物質が散布される際、放射線そのものによる健康被害は小さい。テロリストはむしろ「放射性物質が用いられた」という事実により社会を混乱させ政府の不適切な行動を誘導する目的でこれを用いる。

(99字)

つぶやき

結局他のセクションを見る必要もなく、解きやすい問題のように思います。放射線による健康被害が小さいことは無理に入れなくても良いかもしれません。

放射性物質放射線放射能、という用語の使い分けを間違えないよう注意が必要です。

 

(4)  放射線被爆による人体への影響を、被爆直後(急性期)と長時間経過後(晩期)とにわけて100字以内で答えよ。

回答を作るまでの頭の中 

下線などのヒントがないので、本文中のどこに答えがあるのか、あるいは本文中にはなく知識問題として聞いているのか、問題文を読んだだけではわかりません。まずは持っている知識を絞り出して「嘔吐、白血病、その他のがん、脱毛、胎児への影響」などを思い浮かべました。

全文読む体力(英語力)がないのでセクションのタイトルだけを見ていくことにします。最も有力そうなのが「Biologic Effects of Ionizing Radiation Exposure」、次点が「Medical Preparedness」でしょうか。とにかく、最有力セクション「Biologic Effects of Ionizing Radiation Exposure」から回答に使えそうなところを抜き出してみます

  • 皮膚、肺、消化管、骨髄は急性に影響を受けやすい
  • 具体的には骨髄不全や消化管の障害など
  • 線量2Gyまでは影響なし、2-10Gyが医療介入対象、12-15Gy以上は死亡
  • 晩期でがん、不妊、心血管疾患リスクの増加

この時点で急性期と晩期の話が出てきているので、知識問題ではなく本文中に書いてあることをまとめればよいと確信。制限は100字なので、仮に他に見るべき場所があったとしても減点は少ないと踏んで、ここだけで回答をつくりました。

回答案1

皮膚、肺、消化管、骨髄などの器官は急性期に障害を受けやすく、2-10㏉の被爆によって急性の消化管障害や骨髄不全などが引き起こされる。長期的には、発がん、不妊、心血管疾患のリスク増加などの影響がある。

(99字)

回答案2

皮膚、肺、消化管、骨髄などの器官は急性期に障害を受けやすく、12-15㏉以上の高線量被爆では死に至る可能性もある。被爆から長時間経過後には、発がん、不妊、心血管疾患のリスク増加などの影響がある。

(97字)

つぶやき

字数が足りないので線量の話を入れています。具体例よりも高線量では死亡する、という話の方が良いかもしれません。

「癌」は「がん」の一部なので、回答に使うならより広い疾患を含む「がん」が無難です。

 

(5) 本文の内容から核テロリズムに対する適切なmedical preparedness について考察し理由も含めて400字以内で述べよ。

★210606追記

元の記事には「medical preparedness」というセクションがあり、以下の回答案では「そのセクションと、続くいくつかのセクションをまとめればいい」という方針で記載しています。

ところが!実際の試験問題では問題文に「Radiation dose」のセクションまでしか掲載されていないため、以下の方針では回答を作れないことになります(コメントでご指摘いただきました、ありがとうございます)。

代わりの回答案を用意する時間が今ないためとりあえず元の回答案を残しておきますが上記の点ご留意ください。近いうちに、実際の出題に則した回答案に更新します。

 

回答を作るまでの頭の中(暫定) 

「medical preparedness」というセクションがあるので、ここをまとめれば良いのかそれ以上を求められているのか悩みます。例によって、読んでみてから字数と相談して考えることにします。まずは前半

  • 医療物資の備蓄は重要→医療従事者や医療インフラがやられると混乱は必至
  • 造血系細胞のストックは重要→それ自体が被爆していると使えない
  • 造血幹細胞の他の地域からの供給→確実とはいえない
  • HLAハプロタイプ不一致の血縁者→同時に被爆してる可能性大
  • HLAマッチするボランティア→探すのが大変

前半は「これが大事、だがこんな懸念がある」ということの繰り返しで、適切な準備については特に提案がなく、読み損な感じです。造血幹細胞の備蓄がとくに重要なことはわかりました。続いて後半

  • 国全体、あるいは国際的な計画と組織が準備されている
  • IAEAなどがすでに国際ガイドラインを公開している
  • しかし!過去の原発事故などで既存のプランが非現実的なことがわかっている
  • テロや核戦争で役に立たないことは明らか

国としての準備、国際的な協力も、今あるガイドラインでは絵空事だと…。ここにも答えは無かったです。短いですが最後

  • 政府関係者、国民は、放射線曝露の影響についての知識が不足している
  • このことがテロリストに悪用されている

急に問題点の指摘です。これは重要そうなので回答で触れたほうがよさそうです。

しかしここまでの話ではなんとも心もとないです。続くセクションは「politics and public policy」「policy implications」で、medical preparednessにどれくらい関係あるかわかりませんが、段落の最初と最後くらい読んでみることにします。まずはpotlitics and public policyの2つの段落

  • 核兵器が広まっていて不穏/ロシアがうんぬんかんぬん
  • 期待したより核兵器が抑えられていない/医療と同様に治療より予防が大事

あんまり関係なさそうです。次、policy implications。

  • 政府関係者や国民に対して、核テロのリスクを教育するのは必須→私たちは高校レベルでわかる本を出版している

このセクションは、medical preparednessの最後に出てきた教育の話に終始しており大事そうです。というわけできちんと読んでみます。

  • 医療的準備によってできることとできないことを理解することが不可欠
  • 成功の印象だけを強めるのは逆効果
  • ベストなのは放射線生物学を公教育内で提供すること
  • 医療従事者の教育も十分と言えない→追加の教育が必要
  • 有事の際には、十分な情報に基づいた指示系統の構築と、混乱した政府に変わり公共へ情報提供・指示する医療専門家が必要

めちゃくちゃ重要そうです。ほぼ答えがそろったでしょう。教育が「medhical」preparedness か?という疑問はややありますが、「放射線生物学(医学)」は十分medicalだと思うので、いいことにします。400字あるので、前半の「重要だが十分とはいえない」準備にも触れたほうが良さそうです。

 

エッセンス(暫定)

適切なmedical preparednessとは

政府や国民への放射線生物学教育

  • 理由①:混乱させるのがテロリストの目的だが適切な知識があればそれを防げる
  • 理由②:医療提供体制を準備しておいても被害状況によっては想定通りにいかない可能性があることを知っておくのも重要

医療者への放射線医学教育

  • 理由①:現状では十分教育の機会があるとは言えない
  • 理由②:専門家として国民へ適切な情報を提供し指示する立場になることを想定する必要がある
  • 理由③:政府や国民への教育を担う

 

回答案1(暫定)

テロリズムに対する医療面からの準備としては、放射線の影響にかんする教育を徹底すること、また、政府と協力して、状況によっては政府に代わって、国民に適切な情報提供と指示を行える医療専門家集団を組織することが最も必要である。放射線障害に対する医療行為に必要な物資の備蓄や、効果的な医療行為実施のための国内体制および国際的協力体勢の構築も重要であるが、これらは被害の程度や状況によっては想定通りにいかないことも多いと考えられる。このように、医療提供の準備さえしておけば安心というわけではないことや、逆に、放射性物質が使用されたからといってやみくもに放射線の影響を心配する必要もないということを含めて、政府関係者や国民を教育することは、テロリストの目的でもある社会的な混乱を防ぐために必須である。また、医療従事者への放射線医学教育を強化することも、信頼できる専門家集団を構築する上で重要である。

(393字)

 

回答案2(暫定)

テロリズムに対する医療面からの準備で最も重要なのは、放射線の影響についての教育である。第一に、小規模や低線量の攻撃であれば被爆による人体への影響は大きくないこと、逆に、大規模や広範囲な攻撃であれば医療物資や医療提供体制を準備していても想定どおりにはいかない可能性があることなどを、国民や政府に周知することが必要である。不必要な恐怖や医療への過信がなくなれば、テロリストの最大の目的である社会的混乱を防ぐことができ、政府が正確な情報に基づいた正しい判断を下せる可能性が高まる。第二に、医療従事者への放射線医学教育の拡充が必要である。現行のカリキュラムでは、医療従事者に対する放射線医学教育は十分とはいえない。国民や政府に正しい情報を発信でき、必要に応じて判断や指示を行えるような専門性を備えた人員を増やすためにも、追加の教育プログラムを用意することが必要である。

(381字)

 

 

つぶやき(暫定)

教育を軸に、いわゆる医療提供の準備だけでは足りないということを加えて書きました。

本文にはHLAだのhematopoietic growth factorsだの専門用語が登場していますが、回答には全然必要ないので、いちいち引っかかってると損です。わかるに越したことはないですが、わからなくても(直訳しろと言われない限り)8割OKな回答は作れます。

実際の試験では、政府と国民への教育が必要なことと、それによってテロの目的である社会的混乱を防ぐ必要があること、医療者にも教育が必要なことは書いた記憶があります。医療用物資の準備などだけでは不十分である件は書けなかったです。

あと、(2)で出てきたゴイアニアの事件の件を思い出して、医療用放射性物質の廃棄方法を見直し、テロリストに入手されない手段を講じることも必要とか書いた記憶があります。字数を埋めるために無理やり足したのですが、本文中で「準備より予防が大事」と何回も言われているのでまあハズレではなかったのかな…。

 

さいごに

疲れました。初めに言いましたが、いち学生の回答なのであんまりあてにしないでくださいね…。

改めて解いてみて思いましたが、英語力もさることながら、「○○字以内に要点をまとめる」という能力が結構大事そうです。私は文書を創作するのはあまり得意ではないのですが、大学受験期に、文章を読んで100-200字に要約するトレーニングを結構積んだので、これが今回役に立った気がします。

 

長くなりましたが最後まで読んでいただきありがとうございました!問題2の方も、時間がとれたら取り組みたいと思います。